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春の風が気持ちよくそよぐ3月の午後、出雲市内某所にて未来の座談会が開かれました。参加者は出雲地域介護保険サービス事業者連絡会青年部会の黒松慶樹さん(セカンド・サロンえるだー)、森脇由季子さん(古民家えにし)、上田有加さん(ケアサービス出雲)の3名。希望と懸念。少しずつ見えてきた介護の未来について、また、離職率改善について、普段は異なる職場で働く介護従事者たちが語ったこととは?

kb
黒松 慶樹
セカンド・サロンえるだー
mb
森脇 由季子
古民家えにし
ub
上田 有加
有限会社ケアサービス出雲

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介護業界はこの先どうなっていくんだろう?

k

介護業界は少子高齢化によって今後もさまざまな施設やサービスを必要とされています。しかしサービスを提供するための人材不足は否めず、定着率も低い。利用者本人のQOLを高める目的、そして人材不足の対応策のひとつとして、介護ロボットの導入が国の方針で進められています。
まだ始まったばかりだけど、今後この流れは急速にひろまってくると思う。
介護ロボットについてみなさんはどう思う?

m

技術的な面ではロボットにできることはたくさんあると思うし、ロボットにできることはロボットにやってもらえば良いと思う。けれど、どこまでコミュニケーションの基本である「心」を読み解くことができるかはわからないですね。


  

k

特別養護老人ホームでは近いうちに巡視ロボットが実用化されるらしいね。  

 

  

u

ペッパーくんがレクリエーションの一環として、利用者さんの体操の見本をするっていうのはたまに聞くけど、これもある意味介護ロボットといえるね。

 

  

m

利用者さんもロボットに介助をしてもらうことに抵抗があるかもしれないね。例えばオムツ交換。やっぱりロボットでなくて、人に世話をしてもらいたい、といった事も起こりそう。

 

  

k

それはありえるね。
あと、よく聞くのが『介護ロボットが導入されれば現場が楽になるね』という意見。確かにそうなんだろうけどそれはあくまで結果。まずは利用者さんが快適に生活できQOLの向上につながるためのロボットでないとダメだと思う。
じゃあ、ロボットと人、それぞれが担う介護にはどんな違いがあると思う?

 

m

気持ちや感情といった部分をロボットが汲みとるようになれるのはまだ先な気がする。例えば、認知症の症状などがあった場合、その方の行動にはその人なりの理由がある。その理由を見つけて、理解して寄り添ってあげられる。その状況を読み取り、心豊かで笑顔の見える介護ができるのが人間の強みじゃないかな。 

 

u

介護ロボットは利用者さんに豊かな暮らしをしてもらうツールのひとつ。けれどそのツールを使うのは人。スタッフがうまくロボットを使うには、研修や情報もまだまだ不足していると思う。島根県では介護ロボット研修はまだまだ機会が少ない。
介護業界全体での情報共有や研修ができていないのが現状ですよね。

 

k子供の頃にイメージしていたロボットって人型ロボットだった。
だけど今、実現しているのは人間が遠隔操作で見回りするタイプだったり、人型とはかけ離れたものだったり。ベットそのものがロボットになっていて利用者さんの動きをサポートするものだったり。 

 

m

介護ロボットとそれを使う人の専門性。
これからの介護職の定義が大きく変わりそうだよね。

 

 

u

介護職は、ただ介護をする人たちではなく、それぞれ専門性を持ち、『人が豊かに暮らして笑顔で生きることのサポートをする職業』という立場になるんじゃないかな。

 

 

k

あと、ロボットと話は変わるけど、今ではVRでの認知症体験もできる。
認知症の人がどんな風に感じて何を必要しているかを知ることのできるのは技術革新は本当に素晴らしい事だと思う。

 

m本来介護ロボットは自宅介護に向いていると思う。家族が家事をしながら介護をするのは本当に大変。そこを介護ロボットがサポートしたり、場合によっては介護の仕方をレクチャーするロボットがあっても良いと思う。

 

k

他にも腰につける排泄感知システムというのも聞いた事がある。膀胱の動きをセンサーで察知して、トイレのタイミングを知らせてくれるんだって。利用者さんにも介護施設側にもますます期待されると思う。

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黒松 慶樹大学で法学を専攻後に帰雲。公益財団法人を経て、2015年より、有限会社えるだーに入社。現在は小規模多機能型居宅介護セカンド・サロン えるだー副管理者として、現場と管理職二足のわらじで日々奮闘中。

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森脇 由季子大学で地域福祉学を学び、卒業後、出雲市内のグループホームに11年間勤務。一般社団法人えにしが運営する地域密着型通所介護古民家えにしの所長であり管理者。古民家えにしカワラ屋の所長も兼務している。

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上田 有加体育大学を卒業後、知的障害児施設で勤務。2008年の結婚を機にケアサービス出雲に転職。現在、ケアマネジャーから、ヘルパー、福祉タクシーまで、地域密着型デイサービスの管理者を行っている。

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介護職に人材が定着しないのは何故なんだろう?

k

それでは次のテーマは『介護職における人材の定着性』について。
絶対的に介護士の数が足りていません。これまで介護職には人が定着しないと言われ続けているけれど、どうしてだと思う?

 

u

いくつかの問題点があると思うけどやっぱり『賃金』『体力精神力』『周りからの評価』の3つが大きな問題じゃないかな?

 

 

k

賃金の問題はここではなんともいえないけれど、やっぱりここが一番の問題かもね。
けれど国も施策として介護福祉士の給料を大幅に上げようという動きもある。
今後に期待だね。

 

m

体力的には腰をはじめとする関節を痛めて離職される方が多いですね。
これこそ、介護ロボットの導入で解決するかもしれないですが。
あと、精神的には人とのかかわりに負担を感じるとか。。。

 

 

k

精神的な離職理由に対しては、職場や、チーム全体で情報の共有、職場研修などが必要だね。

 

  

 

m

コミュニケーションの多さは重要だと思う。その上で仕事の配分や取り決め、ルールづくりとか、仕組みを作ることででスタッフの負担を減らせる面もあると思う。

 

 

u

あと、よく言われるのが、周りからの評価。介護現場を知らない人たちが介護職について思うことはいわゆる『3K』。
介護職というだけで”大変ね、きついでしょう”とよく言われます。

 

 

m

私の聞いた話では、若者が介護職を目指したいと口にすると、親や学校の先生が『介護の仕事はきついし、賃金も安いから止めておきなさい』と、言われる場面が多いらしいですよ。

 

 

k

介護職は専門性のある職業だけど、その専門性の評価が見えにくい事もあるかも。
専門性の高さをもっとアピールしたいね。
介護職の一般的なイメージは、『入浴』『トイレの介助』『食事の介助』が主で、誰にでもできると思われている。もちろんその中には、専門的なテクニックや知識が必要だし、認知症に関する知識やスキルは飛び抜けていなきゃいけない。つまるところ介護職は心技体が必要とされる総合職。
利用者の快適な生活を追求するという点で、師のつく職業と同じだと思う。

 

u

ただ分野が違うだけでね。
お医者さんのように病気を治すという成果が明確に見えていないだけなのかな。

 

  

k

そうだよね。
誰もに始められる仕事だけど誰にもできる仕事ではない、という特殊さをアピールして、介護職の価値を高める必要があると思う。

 

 

m

黒松さんは認知症サポーターキャラバンメイトの資格を持ってますよね?
認知症についての理解を深めてもらうために、会社や学校に出向き説明できる資格ですよね?

 

 

k

そうなんです。でもうまく活かせていない。
学校に出向いて認知症の現実について説明したいけれど、中々理解を得られず、説明の時間がもらえないのが残念で仕方がない。
医学の進歩によって寿命が延び、認知症は本当に身近な病気になった。
高齢化最先端の島根県だからこそ認知症教育を進めてほしいと思います。

 

m

イメージといえば、介護施設って閉鎖的だよね。
今でこそ街中に施設もあるけど、一昔前は人知れず山の中にあったりといった、暗いイメージは根深く残っているかも。
実際は明るくて、笑顔もたくさんある場所なのにね。
もっと現場を見てもらい、介護の現場を見てもらうことでわかることが多くあると思う。
そのために必要なことってなんだろうね。

 

u

もっと地域にとって開かれた場所になって、閉鎖的から開放的にする必要があるかも。
地域の方が自由に出入りして利用者さんと交流しても良いと思う。

 

 

m

そのためにも施設の中で待っていてもダメだよね。突然『遊びに来てください!!』といっても誰も来ないと思う。介護職員の心をオープンにして、もっと自分たちから外に出ていくことが必要だと思う。地域の行事や集まりに参加して”あの人よく見るねー、ああ、あの施設の方か”という存在になるくらいに。そうすると自ずと垣根は低くなると思う。

 

k

では、若者に介護職をめざしてもらうためには何が必要だと思う?

 

 

 

m

介護職の方にこの職業に就いた理由を聞くと 「祖父母と一緒に暮らし、両親は共働きで祖父母に育ててもらい、大好き」 「中学の職場体験で、介護施設にいって、この仕事を目指すようになった」 そんな答えの方、結構いますよね。
それって小さい頃からいかに高齢者や利用者に触れ合ったかが道を決めた理由になっているんだと思う。

 

u

なおさら中学生・高校生に介護職の魅力を伝える機会が必要だと思います。 そして多くの若者に介護職に魅力を感じてもらいたいですね。
地域に開かれた介護施設、大人も子供も気楽に出入りできる介護施設。そして、学校教育での介護職と認知症への理解。みんなで考えなければいけない問題だね。

 

k

では本日の締めとして、これから介護職を目指す方、そのご家族に対して一言ずつお願いします。  

 

 

 

m

介護職の仕事につきものなのが”お別れ”があることです。本当に辛い瞬間。”最期を看取るのが私でよかったのかな?”そんな想いがよぎることもあります。けれど死があって、初めて生きている意味を知ります。
介護職は”生きる”ということと向き合う、尊い職業です。

 

u

経験を糧にもっと頑張ろうと思える
出会いなんですね。
私たちは利用者さんに育てられているのかもしれないです。
介護士って人生勉強です。

 

k

きついこともあるけど、この仕事は楽しい。
お金も大事だけど、それ以上のものがきっとみつかる。
嫌なことももちろんあるが、それをふっとばすくらいの笑顔とありがとうの破壊力はすごいです。