令和5年度キャリアアップ研修「業務継続計画(BCP)作成支援セミナー」を開催しました!
主催:出雲市
令和5年度出雲市介護人材確保・定着に係る取組の一環として、下記のとおり「キャリアアップ研修」を実施しました。
本研修会では、株式会社 BCPJAPAN 代表取締役 山口 泰信氏に「感染症」及び「自然災害」発生時に備えたBCPの策定について、わかりやすく講義をしていただきました。
目次
1 研修概要
日時及び場所
第1回 令和5年 8月 9日(水)14:00~16:00 出雲市役所 本庁5階 入札室
第2回 令和5年10月10日(火)14:00~16:00 出雲市役所 本庁6階 601会議室
対象者
市内介護事業所に勤務する中堅職員等
参加数
第1回 55事業所(会場参加4事業所、オンライン参加51事業所)
第2回 60事業所(会場参加7事業所、オンライン参加53事業所)
講師
山口 泰信 氏 (株式会社 BCPJAPAN 代表取締役)
2 研修内容
厚生労働省の業務継続計画(BCP)のひな型を用いて、
各介護サービス事業所で実際に作成するための研修を行いました。
第1回
・感染症発生時のBCP作成方法
・自然災害発生時のリスク把握方法
第2回
・自然災害発生時のBCP作成方法
・訓練の実施方法
3 参加者からの感想
・7割程度の内容でもとりあえず作成して、少しずつ自分たちの施設に必要な内容をチームで足していきたいです。
・お米は固いと食べられないが柔らかいのであればどうにか食べられるなど、実体験をもとにしたお話が聞けて参考になりました。
・日頃の生活の中でもできることがたくさんありました。意識して実践したいです。
・災害支援の経験が豊富な講師であり、非常に実践的な講義でした。
自分としてもなるべく災害時に有効となる準備をBCPも含めてしていきたいです。
4 研修後のQ&A
(Qは参加者からのご質問、Aは山口先生からのご回答です。)
Q1 災害に備えて最低限必要な物品等について
Q2 BCP策定後の訓練内容について
Q3 緊急時に職員が帰宅を希望した際の対応等について
Q4 訪問介護事業所で実際に災害時に行ったケースについて
Q5 ケアマネ事業所での対応について
Q6 BCP策定の経過措置期間内に優先して検討しておくべき内容について
Q7 停電対策についてBCP策定の経過措置期間内に優先して検討しておくべき内容について
Q8 水道停止対策について
Q9 避難所対策について
Q10 その他に検討しておくべきことについて
Q1 災害に備えて最低限必要な物品、整備の優先、ラインがあれば教えてほしいです。
A1 電源供給を優先した方がよいと思います。
優先する理由は、例えば下記のような理由です。
1.生命維持:呼吸の維持(酸素供給)・たん吸引の利用者に対応するため
2.情報通信:固定電話・FAXへの電源供給を行い、情報を公的機関等へ発信するため
3.携帯スマホ:モバイル電源・車から充電し、情報を得るため
電源供給方法として、例えば下記のようなものがあります。
1.車のシガーソケットからUSB経由でスマホに直接充電する
2.シガーソケットにカーインバーターを接続し、100Vのコンセントを接続できるようにする
または、車のバッテリーにカーインバーターを接続すると、より多くの電力が100Vのコンセントへ提供できる
3.災害用水電池、空気電池、乾電池、充電式電池、災害用マグネシウム電池を使う(排ガスが出ない)
4.ポータブル電源を使う(排ガスが出ない)
5.発電機を使う(LPGを使用する施設ではLPGがいいのでは?)
Q2 BCPの訓練についてですが、本研修で提案のあった訓練について全て行うと時間が足らなくなると思います。
策定後、施設で特に必要と思われる部分をピックアップして行ってもいいですか。
A2 防災訓練(重要な順番)を行う場合は、以下からピックアップして行う or 確認するだけでも意味があります。
1.火災からの避難訓練(報知器動作確認・119通報・避難誘導)
2.水難からの避難訓練(上階へ避難・高台へ避難・別棟へ避難)
3.初期消火訓練(消火器・スプリンクラー・消火栓・消火ポンプ確認)
4.応急手当訓練
安否確認訓練を行う場合は、次の訓練を行うとよいと思います。
・利用者(家族)への連絡(優先順位と通信と回答の記録)
→厚生労働省のBCPのひな型の様式9:災害時利用者一覧表(安否確認優先順位)を活用
・スタッフ間・グループ内の情報連携訓練(安否状態・出勤の不可・コメント)
机上訓練(災害イメージゲーム)を行う場合は、次の訓練を行うとよいと思います。
・地震の揺れの後、利用者全員の安全を確認し安全状態を確保する方法の確認・実践
・停電後の生命維持に関する装置の動作確認と通電方法の動作確認・実践
・停電状態での介護業務の継続に関するディスカッション
(水分補給・食事・排泄・温度調節・安心状態の確保・非常事態の時に具体的に声掛ける言葉の確認)
Q3 少ない職員数で、優先すべきサービスについて教えてください。
緊急時に自宅が心配だから帰りたいという職員についての対応はどうしたらいいでしょうか。
(皆が家族や家の様子を心配する気持ちは理解できます。保育園や学校からの迎えの連絡もあるはずなので、
頑張れる人だけに頼ることが可能なのでしょうか。帰らないでと言えるのでしょうか?)
A3 帰宅する職員については、自由意思を尊重した方がよいと思います。
緊急時に職員が帰宅する場合は、下記の対応を行いましょう。
1.自身の判断で帰宅することで確認サインをもらう
2.到着後連絡を本部に入れてもらう
3.翌日は子供連れでもいいから出勤してもらう
4.道路状況の確認・物資の調達などを依頼する
5.スタッフの避難所として施設の使用を許可する
職場に残る職員への対応では、次の点について確認しておきましょう。
1.職員の安全確保の義務
2.適切なスタッフ用の寝具・飲食料の確保
3.緊急事態用の休息時間と場所の確保
4.退職した社員などへ緊急事態で勤務要請体制の構築
5.緊急対応アルバイト・ボランティアの積極受入
6.自家用車を業務に使用した場合の有償対応の検討
※災害後は通勤困難による通勤時間延長や時間外労働など離職率が上がる傾向にありますので、スタッフへのケアも重要です。
(道路寸断・交通麻痺・自宅家屋の被災・家族の被災)
Q4 訪問介護事業所で実際に災害時に行ったケースがあれば教えてほしいです。
A4 【東日本大震災後の 介護現場・生の声】
https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/resources/e451bd49-3e5c-44d1-ae26-0ea81b47434d/dai-1.pdf
【災害時における社会福祉施設・事業所の災害対応(熊本地震・阿蘇郡南阿蘇村のヒアリング調査より)】
https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/FC/0014/FC00140L163.pdf
Q5 ケアマネ事業所での対応はどうしたらいいでしょうか。
A5 まずは自分たちの事業所での安全確保を優先してください。
1.情報通信:固定電話・FAXへの電源供給
2.携帯スマホ:モバイル電源・車からの充電
3.適切なスタッフ用の寝具・飲食料が必要
4.緊急事態用の休息時間と場所が必要
5.利用者(家族)への連絡(優先順位と通信と回答の記録)
→厚生労働省のBCPのひな型の様式9:災害時利用者一覧表(安否確認優先順位)を活用
6.スタッフ間・グループ内の情報連携訓練(安否状態・出勤の不可・コメント)
▼想定
・台風で明日のデイケアを休業する場合の連絡は、デイケア事業所が行うのが普通です。
・2日間休んで3日目に営業する場合は、デイケア事業所が行い、ケアマネに休業連絡を入れておくと安心です。
・地震でデイケア事業所が被災状況にある時に、利用者の家族に連絡をし施設内の利用者の安否を報告するのは
デイケア事業所が実施します。
・デイケア事業所は被災情報をケアマネに連絡し、ケアマネは利用者の安否確認や避難先などを
確認することになると想定しています。
・連絡の着く利用者には、色々な担当(自治会・民生員・ケアマネ・介護施設・家族)から
安否確認が届くことになります。
・被災地の多くでは、毎日のようにアンケート調査や訪問・慰問などが行われるのが現状で、
または、取り残されるケースも可能性としてあります。
・安否の確認情報も錯綜することになり、避難していなかった人が避難したり、避難先から戻ってきたり、
避難場所が変更になったり、遠い地区の親戚宅に避難されたりと想定外の移動となることがあります。
まれに行方不明になる方もいらっしゃいます。(徘徊など)
▼決め事
・何日の何時時点での最新情報として、ケアマネと通所施設・福祉センターで共有を試みましょう。
・要支援者へのボランティア派遣などボランティアセンターが立ち上げられた時の橋渡し役になるように、
支援が必要な人リストと支援内容・飲食料・要求と提供の調整役ができるようになりましょう。
Q6 任命状でBCP策定メンバーを複数任命しましたが、なかなか進みません。
A6 BCP策定の経過措置期間内に厚生労働省の介護事業所等のひな型に沿って特に次の項目について、
埋めていくことを優先するといいです。
1.スタッフ安否確認方法(中心人物1位 2位 3位 4位を決める)
2.利用者の安否確認方法(優先順位と分担した時の分担方法を確認する)
3.災害リスクの分析と表示(マップをつけて具体的に確認する)
4.停電時の対応
5.継続する業務と中断する業務の選別
6.継続業務を継続する方法の検討
7.中断する業務の中でも最初に始める業務の選別
Q7 停電対策はどうすればいいでしょうか。
A7 【通信用としての具体策】
上記Q1の記載をご参照ください。
【照明用としての具体策】
LEDランタンの明るさがちょうどよいため、非常時の明かりとして用意するならランタンがおすすめです。
【空調が使えない場合の具体策】
暑さ対策には、うちわ・電池式/充電小型扇風機を用意しておきましょう。
寒さ対策に関しては、使い捨てカイロ、湯たんぽを用意しておきましょう。
Q8 水道停止対策はどうすればいいでしょうか。
A8 飲料水は、ペットボトル9L ×人数分用意しておくとよいでしょう。(1人1日3Lが目安)
生活水は、5人でポリタンク10L×2(水道水を1か月ごとに入れ替えておく)を目安に用意しておくとよいでしょう。
給水車に取りに行く用の容器(上記ポリタンク使用)や台車を用意しておくとよいでしょう。
トイレ用ビニールや簡易トイレキットも用意しておくと安心です。
Q9 避難所対策として用意しておいた方がいい物を教えてください。
A9 タオル
防寒衣類
毛布・寝袋・銀マット
箸・スプーン・フォーク・缶切り
コップ
(紙皿や紙コップは潰れやすく、高齢者が持ちにくい場合は陶器やプラスチックの容器にサランラップをかけて
使い、使用後はサランラップのみ捨てるようにするとよい)
食事用エプロン
おむつ
排泄袋
Q10 その他に検討しておくべきことはありますか。
A10 次の項目についても確認しておきましょう。
(調理編)
・LPGのみで稼動する調理器具をリスト化して整理しましょう。(停電時でもLPGのみで調理が可能)
・外部機関より炊き出ししてもらえる時の対応について検討しましょう。
1 調理器具も全てを持ってきてもらい支援してもらう
2 キッチンや調理器具を貸し出す場合
3 食材も若干提供する場合
※1食だけ提供するボランティアチームに大切にしていた食材を断りもなく全部使われたケースもあります。
・ポータブル発電機が支給してもらえた時の対応方法について検討しましょう。
1 発電機の置き場所(排気ガスと騒音を考慮)
2 延長ケーブル(電流のアンペア数にあったコードを用意)
3 何に電源を繋げるのか
4 どの時間帯に何に繋げるのか?(確定させなくて良いのでまずリストアップしておくことが大切です。)
(食料対策編)
・被災初日にできる火を使わないメニューはどんなものがあるかを確認しておきましょう。
(レトルト・缶詰・アルファ化米(水やお湯で戻る)・おやつ・甘いもの・いつものお菓子など)
(福祉避難所)
・災害時は、医療と介護においては急激にニーズが高まります。
・一時的には休止しても良いが、サービスレベルの低下が長引くと関連死を招きます。
・自施設が何もできなくなった場合にどこに頼んで利用者の介護レベルの維持を努めるのかとても重要なことです
・災害時の定員超過は許可されています。
平成25年5月7日付厚生労働省老健局介護保険計画課 高齢者支援課・振興課・老人保健課発事務連絡
「災害により被災した要介護高齢者等への対応について」の3より、
「介護保険施設、短期入所生活介護、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、
複合型サービス、通所介護及び通所リハビリテーション等については、災害等による定員超過利用が認められているところです。
その際の介護報酬については、利用定員を超過した場合でも、特例的に所定単位数の減算は行わないこととしており、
この場合において、通所介護費等の算定方法にかかわらず所定の介護サービス費の対象とします。
また、特定施設入居者生活介護についても同様と致します。
なお、被災のため職員の確保が困難な場合においても、同様に所定単位数の減算は行わないこととします。」
となっておりますので、ご確認ください。
「平成25年5月7日付厚生労働省事務連絡「災害により被災した要介護高齢者等への対応について」」をダウンロードする(PDF:72kB)
Q1 Q2 Q3 Q4 Q5 Q6 Q7 Q8 Q9 Q10
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