VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!(前列)左から、グループホーム萌の介護職員Sさん、専務Sさん、介護職員Nさん。(後列)左からグループホーム出東ララの介護支援専門員Aさんと施設長Uさん。

外観

グループホーム出東ララとは

出雲市斐川町三分市にある「グループホーム出東ララ」は、保育事業と介護事業を運営する社会福祉法人出東福祉会が、介護支援の充実を図るため平成25年に開所した認知症対応型共同生活介護施設。
近くには小学校があり、敷地内には同法人のこども園とデイサービスが隣接する特色を活かし地域や世代間交流を大切にしながら、一人ひとりの「できること」を支援し、心温かな質の高いサービスの提供を心がけている。

今回はこちらに、「グループホーム萌」の専務Sさんと介護職員Sさん、Nさんが訪れ、「グループホーム出東ララ」の施設長Uさんと介護支援専門員Aさんから、施設の特色を活かした取り組みについてお話を伺った。

【今回の出演者】
出東ララ 施設長 Uさん
出東ララ 介護支援専門員 Aさん
萌 専務S
萌 介護職員 Nさん
萌 介護職員 Sさん

それでは『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!

自然を五感で感じながら、穏やかに過ごせる環境づくり

建物は広い土地を活かした横長の平屋で、玄関は出雲大社の宮づくりをイメージしたといい、落ち着いた色調の外観が地域の風景に馴染んでいる。

出東ララ 施設長 Uさん

当施設は玄関を中心に東西で2つのユニットに分かれ、1ユニットが9名で最大18名の利用者さんが入所できます。
ユニット間は廊下で繋がっているので、自然と行き来しやすく、利用者さん同士が交流を楽しんだり、職員同士も協力しやすい造りになっています。

萌 専務S

木を基調とした空間で、とても落ち着く雰囲気ですね。
天井が高くて開放感もあります。

出東ララ 施設長 Uさん

ありがとうございます。
やはり木は温かみがあって、音も吸収してくれるので気持ちの安定にも繋がるため、最初から建物は木造にすると決めていました。
そして、利用者さんたちが穏やかに過ごせるよう、家庭的な雰囲気を大切にしました。
斐川地域は築地松に囲われた農家造りの大きな家が多いので、本物の木でしっかりとした丸太の梁も見せて、昔ながらの民家を思わせる造りとなっています。

萌 専務S

利用者さんのことを考え、この地域ならではの特徴も反映されているんですね。
建物に込められた思いを知って、より温かみを感じました。

出東ララ 施設長 Uさん

また、木が気持ち良いのか軒下には小鳥が集まってきます。
のどかな自然の中で、鳥の囀りやそよそよと吹く風を感じながら、川や田んぼに渡り鳥が行き交う様子を眺めて、、、
「こういうところで晩年を過ごせるのは良いですね」と見学に来られたご家族さんも一様に安心されます。

萌 専務S

北山まで一望できて、本当に景色が良いですね。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

皆さん、特に居間の大きな窓から見る景色がお気に入りの様子で、自然とまわりに集まって外を眺めたり、歌を歌ったり。
テラスでは子どもたちとの交流も楽しみます。
皆さんがゆったりと穏やかに寛げるようそれぞれの心地良い過ごし方に寄り添っています。

出東ララ 施設長 Uさん

また、こちらではこれまでに6名の看取りをしました。
看取りをするにあたっては、皆さんが穏やかに晩年を迎えられるよう介護する側も穏やかな気持ちで接することが大事です。
部屋には花を生け、好きな音楽を流したり、窓から外を眺めたり、子どもたちの弾む声や太陽の光を感じるなど、色々な五感を使ってお互いが落ち着いた時間を過ごせる環境づくりを大切にしています。

萌 介護職員 Nさん

利用者さんだけでなく介護する側の気持ちも穏やかにというのは、とても大切なことだと思いました。
また、子どもたちの声が聞こえると、それだけで気分が明るくなりますね。
これは、こども園が隣接するララさんならではの良さだと感じました。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!2
高い天井が生み出す開放感が気持ち良い。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!3

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VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!4
暖かな木の温もりが溢れる建物内を案内して頂きました。

地域の特性や文化を活かし、世代をこえた交流を大切に

出東ララ 施設長 Uさん

私たちの法人は、もともと保育事業からスタートしました。
その後、地域の在宅高齢者を支援するため同じ敷地内にデイサービスセンターを開設、さらなるニーズに応える形でグループホームを開設したという流れです。
この地域では保育園の送迎を祖父母がする家庭も多く、実際送迎をされていた方には馴染み深い場所で、当時の情景を懐かしんだり、子どもたちを近くに感じられることを皆さんが喜ばれています。

萌 専務S

こちらでは、子どもたちとの世代間交流も大切にされていると伺いましたが、具体的にどんな関わり方をされていますか?

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

隣の園児たちとは色々な季節行事はもちろん、敷地内にある「ララ畑」での収穫作業などを通して、普段から頻繁に交流を楽しんでいます。
子どもたちの元気な姿を見ると、皆さんとても良い表情をされますよ。
子どもたちと交流した日は、いつもよりもさらに落ち着かれて、穏やかな雰囲気が広がっています。

萌 専務S

まさにおっしゃる通り。
子どもたちと接する時の皆さんは本当に嬉しそうで、私たちに見せてくださる笑顔とは、また違った柔らかな優しい表情をされますよね。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

本当に違いますよね。
ご家族からは「うちのおじいさんは子どもが苦手で」と言って入所された方も、実際に子どもたちと触れ合うと、とても喜ばれたり(笑)。

出東ララ 施設長 Uさん

子どもたちの持つパワーは凄いですね!
そして畑の収穫をしてもらったお礼に、こちらからは出雲弁を書いた手作りのしおりを渡します。

萌 専務S

こういった手作りのプレゼントもお互いのコミュニケーションに繋がりますね。

出東ララ 施設長 Uさん

さらに、子どもたちがこれを持ち帰って、それぞれ家のおじいちゃんおばあちゃんに見せながら出雲弁の意味を聞くようで、家族でも会話が弾んでコミュニケーションの一つになっているそうです。
こういった関わりは子どもたちやその家族にとっても良い影響があると感じています。

萌 専務S

なかなか普段は聞き慣れない出雲弁もあって、クイズみたいで楽しいですよね。
他にはどんな地域交流をされていますか?

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

以前は色々な地域行事に参加していていましたが、今は地域の皆さんから野菜をいただいたり、畑の指導に来てもらう形で交流を続けています。
そして、そのお返しとして、ここで餅つきをしたお餅に手作りの包装を施し、感謝の思いを込めて地域の方へ配ります。

萌 専務S

お返しに皆さんが手作りされたものを贈るというのは、とても良いですね。
これを見ただけで、その背景にある皆さんの強い想いや温かさが伝わってきますし、作られているシーンも想像ができました。

出東ララ 施設長 Uさん

やはり何かもらったらお礼を返すというのは大事で、昔ながらのご近所づきあいと同じように地域との関わりを大切にしています。

萌 専務S

今の時代、昔ながらの文化が薄れつつありますが、このように思いを形にして贈り合うという心配りは、これからも地域の交流として大切に残していきたいですし、次の世代にも繋げていきたいですね。
こういった取り組みは、私たちの施設でもぜひ取り入れたいと思いました。

出東ララ 施設長 Uさん

実はコロナ前までは、毎年開催されていた出東地域の文化祭では「ララ喫茶」という催しもしていました。
いつも野菜をくださる皆さんに「私たちも何かしたい」と、利用者さんから声が上がって、地域の中学生と一緒に手作りのお菓子と飲み物をふるまっていました。

萌 介護職員 Nさん

写真を見ると、みなさんがとても生き生きと取り組んでおられた様子が伝わります。

出東ララ 施設長 Uさん

認知症になると意思の疎通が取れなくて何もできないと、暗いイメージを持たれている方も多いです。
こうやって積極的に地域に出ることで、認知症でも意思を持って色々な活動ができることを示す機会になり、皆さんの理解を深めるきっかけにもなります。
今は、遠い夢ではありますが、いつか文化祭に限らず、地域の方が気軽に集まってお茶を楽しめる喫茶を開けたらとも思っています。

萌 介護職員 Nさん

それはとても良いですね!

出東ララ 施設長 Uさん

「ララ」という名称は、利用者さんが毎日を気楽に、楽しみを持って暮らすことができるようにという思いと、子どもたちや皆さんが呼びやすいようにとついた名前です。
今後も皆様から気軽に声を掛けていただけるよう、色々な地域との関わりや世代間交流を大切にして、さらに親しまれる施設にしていきたいですね。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!8出東ララの畑をテラスから見学。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!9

一人ひとりの「できること」を大切にした支援を心がけています。

萌 専務S

こちらでは、食事を全て手作りされているそうですね?

出東ララ 施設長 Uさん

はい、全ての食事を各ユニットで協力しながら作っています。
食事は生きる源なので、どんな仕上がりでも自分たちで作ろうと決めていました。
まな板や包丁の音、匂いからもこれまでの暮らしの一部を感じて欲しいという思いで、ここで料理することを大事にしてきました。
最初は不慣れな職員もいましたが、皆で助け合いながら続けるうちに料理の腕も上達して、今では男性も関係なく皆が出来るようになりました。

萌 専務S

それは凄いですね!
思いがこもった食事は皆さん喜ばれますね。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

一緒にお好み焼きや焼き餃子を作ってわいわいしたり、たまには自分で好きなカップラーメン選んで食べる日もあったり、お誕生日にはリクエストメニューにしたり、皆で楽しく食事を囲んでいます。

出東ララ 施設長 Uさん

また、ここでは一人ひとりの「できること」を大切にした支援を心がけているので、食事作りでも達成感を感じてもらおうと、下ごしらえを分担したり、料理が得意な利用者さんには、その中の一品をお任せすることもあります。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

その時は、やる気を失わないように口出しはせず見守ります。
皆さん自慢の手料理をふるまってくださいますよ。
また、達筆な字でその日のメニューを書いてくださる方もおられます。
お体の状態に合わせ、安全に配慮しながらそれぞれの「できること」を発揮していただきます。

萌 介護職員 Sさん

楽しく食事を囲むこともですが、その過程も大切にされているんですね。
こちらに掛けられている干し大根も皆さんで作られたんですか?

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

はい、干し大根に、干し柿も毎年つくっています。
近所の方が色々と持ってきてくださるので、季節の手仕事を楽しんでいます。
また、利用者さんとの会話で、フキノトウの話題になったことがきっかけで、最近は春にフキノトウ味噌も作り始めました。
「家の周りにもあったなあ」と振り返りながら喜ばれる様子を見ると嬉しいですね。

萌 専務S

何気ない会話から察して意欲を引き出し、実現することが素晴らしいですね。
利用者さんは嬉しいと思いますし、こういったことが積み重なって信頼関係に繋がるのだと思いました。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

そうですね。
そしてこういった普段の楽しい様子や生き生きと活動される姿をご家族や地域の方にも見ていただこうと、月に一回新聞を作ってお配りしたり、ホームページへも掲載しています。
さらにご家族へのお便りには、お一人ずつ「今月のベストショット」の写真も添えて送っています。
他のご家族とも共有できると喜んでいただいています。

萌 専務S

お一人ずつの写真を添えるのは良いですね!
その際に心がけていることはありますか?

出東ララ 施設長 Uさん

活動への取り組み具合は人それぞれなので、シャッターチャンスを逃さないように、
そして、いつも同じ写真にならないよう気を付けています。
ご病気の進行を不安に感じるご家族もおられるので、その方らしい自然体の笑顔を引き出す声掛けをしながら、安心してもらえる写真を撮るように心がけています。

萌 専務S

ご家族の思いにも寄り添うことが大事ですね。
写真撮影の大変さは私たちもよくわかります。
ですが、こうやって喜ばれると嬉しいですし、皆さんに日々の様子を知ってもらう機会は大切にしたいですね。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!11

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!廊下
ハンガーで乾かされている干し大根。笑みが自然とこぼれます。

風通しの良い職場で、相手を思い労う気持ちを大切に

続いて、職場の雰囲気づくりや職員同士のコミュニケーションで大切にされていることなどを伺った。

出東ララ 施設長 Uさん

ララには、20代から70代まで幅広い年代の職員が勤務しています。
勤務形態は様々ですが、各年代それぞれの特色を活かして力を発揮してもらっています。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

世代は色々ですが、みんな仲良く風通しが良い職場だと思います。
具合が悪くて休む職員がいると、「自分が入るから任せて」とお互い積極的に仕事をカバーし合ってくれるので助かっています。

萌 専務S

職員同士の連係プレーは大切ですね。
普段の情報共有についてはどのようにされていますか?

出東ララ 施設長 Uさん

月に1回のミーティングを設けていますが、非常勤職員は時間が合わず全員が揃うことが難しいので、記録の共有だけでなく直接声を聴き、それぞれの思いを汲み取りながら皆の意思疎通をサポートしています。

萌 専務S

世代が違うと今までの経験や考え方も違うので、職員同士が上手く連携をとれるよう調整することが大事ですね。

出東ララ 施設長 Uさん

そうですね。皆が意欲的に働けるよう、それぞれに合わせた声掛けも意識しています。
職員と接する時には、とにかくまず服装でも挨拶でも良い所に気付いたら、何気ないことでも褒めるようにしています。
そして、ただ褒めるのではなく同時に自分が参考になったことがあれば、それも付け加えて伝えることを心がけています。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

普段から施設長の温かい思いを感じています。
いつも様子を気にかけてくださるので相談しやすく、本音を言い合える関係をとても心強く感じます。

出東ララ 施設長 Uさん

感情はその場の雰囲気や利用者さんへの接し方にも影響するので、職員のメンタルケアはとても大事だと思っています。
常に職員の様子を気にかけながら、サポートすることはもちろんですが、落ち込んでいる職員には少しでも前向きな気持ちになって帰って欲しいので「あなたが居てくれて私は助かっているので、お互い頑張ろうね」と帰り際に労いの気持ちを伝えるようにしています。

萌 専務S

温かい声掛けで労いの気持ちを伝えることが大切ですね。
相手を思いやる接し方にとても感動しました。
これは管理職として足りなかった部分だなと気づかされました。
これからは私もみんなに伝えたいと思います。
他にも気を付けておられることはありますか?

出東ララ 施設長 Uさん

私自身、現場で色々な経験を通して感じてきた思いがあるので、言葉で伝えるだけでなく姿で表して、仕事への向き合い方を感じ取ってもらえるよう心がけています。
仕草や言葉遣い一つとっても、必ず誰かがどこかで見ていると意識することで、自分を磨かくことにも繋がりますし、少しでも職員たちの成長に良い影響が与えられると嬉しいですね。
雰囲気の良い職場環境で、皆がお互いを高めていくことで、介護支援の質の向上も図っていけたらと思っています。

萌 専務S

とても素晴らしいお考えですね。
お話を聞いて自分はまだまだだと思いを改めることができました。
私もこういった考え方を見習って、もっと職員たちと信頼関係を深めていきたいです。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!12

小さな交流の輪を広げ、地域が繋がることで大切な文化が守られていく

最後に今回の会で感じたことを振り返ってもらった。

萌 専務S

今回お話を伺って、出東福祉会としての特色を活かした世代間交流が一番の魅力で、お互いに良い影響をもたらす素晴らしい取り組みだと感じました。
私たちの施設でも、以前は幼稚園の子どもたちと交流を図っていましたがコロナ禍で途絶えていたので、もう一度復活させたいと思いました。
きっかけを頂き、ありがとうございます。

萌 介護職員 Sさん

子どもたちとの交流もですが、地域行事にも参加しにくい状況の中でも、想いを形にして贈り合うことでも、地域と繋がることができるとわかり感銘を受けました。
ぜひ、私たちも取り入れていきたいです。

萌 介護職員 Nさん

色々なお話を聞かせていただきありがとうございました。
私は他の事業所を見学することが初めてだったので大変勉強になりました。

出東ララ 施設長 Uさん

私たちも皆さんに施設の特色や取り組みをご紹介したことで、改めて自分たちの恵まれた環境や、何気なく大事にしてきた想いも再認識できました。
もっと他の職員も参加して楽しみたかったなと思うくらい、とても有意義な時間でした。
ありがとうございました。

出東ララ 介護支援専門員 Aさん

本当にお互いの良いところを知ることが出来て良かったですね。
ぜひこれからも、福祉施設同士が集まって交流が出来ると良いですね。
これを機に、またお互いに交流を深めましょう。

萌 専務S

はい、ありがとうございます!
ぜひこれからも交流を続けましょう。

VOL.06『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!13

座談会を終えて

『グループホーム出東ララ』のいいとこ発見!いかがだったでしょうか?

世代を繋ぎ地域全体の福祉を支えるという、法人ならではの特色を活かした取り組みに感銘を受けた3名。
「今、自分たちができる形とは何か」を改めて考え直すきっかけとなったようです。
今回の訪問でも、事業所それぞれの良さがあり、利用者さんはもとより職員を大切に思う気持ちも同じで、どちらにも素晴らしい幸せの形があるのだとわかりました。
この交流をきっかけに、今後も地域の施設同士で繋がりの輪を広げていかれることを願っています。

■関連リンク

出東ララ(社会福祉法人 出東福祉会)

グループホーム萌(有限会社 美奈須)