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現在、出雲市内の複数の介護事業所では、多くの外国人介護職員が活躍しています。
異なる言語や文化の中、彼らは日本の介護現場でどのように働き、施設側はどのように対応しているのでしょうか。
今回は市内の3施設から、ミャンマー出身の職員7名と日本人職員3名にお集まりいただき、現場の様子や取り組みについてお話を伺いました。

座談会メンバー紹介 【()は来日年】

特別養護老人ホームやまゆり苑

やまゆり

左から、Iさん(2023年)、Kさん(2023年)、Sさん、Eさん(2023年)

特別養護老人ホーム万田の郷・老人保健施設まんだ

ほのぼの

左から、Wさん(2024年)、Tさん(2024年)、Nさん

特別養護老人ホームいなさ園

いなさ

左から、Kさん(2023年)、Nさん、Dさん(2023年)

座談会

ミャンマーから日本へ

インタビュア

今日は7名の外国人介護職員の方々にお越しいただきましたが、偶然にも皆さんミャンマーのご出身なんですね!
ミャンマーと日本の介護事情に何か違いはありますか?

やまゆりKさん

ミャンマーでは、高齢者のケアは主に看護師の仕事です。
介護士も身の回りのお世話を行いますが、その活動はボランティアとして行われているのが一般的です。

やまゆりIさん 日本では介護士もお給料がもらえます。
そこがミャンマーとの大きな違いの一つです。
インタビュア

ミャンマーでは介護をボランティアで行っているんですね。
今の皆さんの業務内容は食事や服薬から、入浴、排泄、移乗まで、利用者さんの身の回りの介助をされているとお聞きしています。
皆さん日本語がとてもお上手ですが、どこで勉強されたんですか?

ほのぼのTさん ミャンマーで約1年間、日本語の勉強をしました。
インタビュア

1年程度の短い期間で、日常的な会話を習得されたなんてすごいですね!
では、介護の現場で働いていて、大変だな、難しいなと思ったことはありますか?

ほのぼのTさん

出雲弁が分からなかったです。
「タバコする」って言われて、「え?どこにタバコがあるの?」って(笑)

  ※出雲弁では、「タバコする」を「休憩する」という意味で使います。

やまゆりIさん

私も利用者さんの出雲弁が分からなかったです。
でも今はだいぶ分かるようになりました。

食事介助の時、利用者さんがむせられないようにとても気を使います。
大変ですが、とても大事なことなので。

いなさ

お風呂の介助が難しいです。
頭を洗う時に利用者さんが動かれるので、耳に水が入らないようになど、入浴介助は気をつけることがたくさんあります。

やまゆりKさん

最初は難しいと感じることもありましたが、職員さんたちのおかげでだいぶ慣れることができました。
介護の仕事は大変と思ってやったら大変ですが、自分の家族だと思ってやったら大変じゃないです。

インタビュア

皆さん、とても真摯に仕事に向き合っておられることが伝わります。
職場には皆さんの他にも外国人職員さんはおられますか?
また、外国人職員さんのために何か工夫していることなどはありますか?

やまゆりSさん

社会福祉法人やまゆりには、フィリピンの方も含め、現在8名の外国人職員がいます。
私たち日本人職員は、受け入れ前にミャンマーやフィリピンの国民性などを調べ、文化の違いや物事の伝え方などを事前に共有しました。
言葉については、最初は翻訳アプリなどを使ってやり取りをしていましたが、日本語がとても上手だったので、言葉で苦労することはほとんどなかったです。

いなさ

いなさ園には私たちを含めて3人のミャンマー人がいます。
3人で話す時はミャンマー語で話しています。
職員さんたちが優しいので、とても働きやすいです。

いなさNさん

いなさ園では、彼女たちが分かりやすいように、利用者さんの名前に全てふりがなをつけました。
でも飲み込みが早くてすぐに覚えてしまったので、あまり必要なかったかもしれません(笑)

ほのぼのNさん

ほのぼの会では彼女たちのほかにも、ベトナム人など合計6名の外国人職員が働いています。
いなさ園さんと同様に、見えるところの漢字表記はすべてカタカナ表記に変えました。
また、最初の3カ月間は、日本人職員がマンツーマンで指導しています。

ほのぼのTさん

先輩たちが優しくて、ゆっくり教えてくれるので仕事が楽しいです。

インタビュア

働きやすい職場環境を積極的に整えておられますね。
では、外国人職員さんと仕事をする上で、困っていることや今後の課題などはありますか?

やまゆりSさん 困っていることは…特にないように思います。
彼女たちは覚えも早くて、すごく努力されていることが伝わってくるので、教え甲斐があるんです。
むしろ教えたい!って思わせてくれるんですよね。
成長するのも早かったですし、今は日本人職員よりもいろんなことに気がついてくれるようになりました(笑)
いなさNさん うちも特に困っていることはないですね。
すごく働き者で、こちらから何か指示を出さなくても自分たちの方から「これをしてもいいですか?」「私こっち行きますね!」と積極的に言ってきてくれるので、一緒に働いていてとても助かっています。
ほのぼのNさん

皆さんと同じで、真剣に考えてみたんですけど困っていることはないんですよね(笑)
言うことが本当になくて。
むしろ一緒に働きながら、日本人職員の方が意識向上させてもらっていると思うくらい、みんな一生懸命だし優しいし、思いやりがあります。
向上心もあって、「私やってみます」って自分から言ってきてくれることもありますし、こちらが見習うべき点がたくさんありますよ。

インタビュア 違う文化や価値観をもつ外国人職員さんたちと働くことで、日本人職員さんもいい刺激を受けておられるんですね!
利用者さんにとってはどうでしょうか?
やまゆりSさん 利用者さんとコミュニケーションを取るのも上手ですし、本質的に優しいので、その優しさが例えば認知症の方などにも伝わっているようで、彼女たちのことを気に入っておられる様子です。
いなさNさん

利用者さんの中には「〇〇さんならいいよ」と、Dさんたちを呼ばれるなど、彼女たちに心を許しておられる方も多いですよ。

ほのぼのNさん コミュニケーション能力が高く、物腰も柔らかい。
人は焦ると早口になってしまうことがありますが、彼女たちはそういうこともなく、常にゆっくり丁寧に対応されるので、利用者さんたちも安心されるんだと思います。

日本での暮らし

「困ったことが本当に出てこない…」と回答に悩んでしまう日本人職員さんたち。
彼女たちの働きぶりを心から評価しておられる様子でした。
では、外国人職員さんたちのプライベートについて、出雲市でどんな風に生活しているのかを聞いてみましょう!

インタビュア 生活していて、「ここが大変!」と思うことはありますか?
ほのぼのTさん 日本は寒いです(笑)
ミャンマーは一年中温かいので、雪も日本に来て初めて見ました。
いなさ

同じく、冬が苦手です。
寒くて風が強い日などは、自転車に乗るのが大変です。

やまゆりEさん

やまゆり苑は少し高いところにあって、同じ勤務の職員さんが送り迎えしてくださるので助かっています。

ほのぼのWさん

反対に夏は好きです!
暑いのは平気です。

ほのぼのNさん

そうそう、夏に日本人職員が大汗かいている時でも、彼女たちは涼しい顔をして仕事していて、すごいなー!って(笑)

やまゆりIさん

利用者さんを名前で呼ぶことに、最初はとまどいました。
日本では目上の人でも名前で呼びますよね。ミャンマーではこれは失礼なことなんです。

インタビュア

そうなんですね!
ミャンマーでは目上の人をどのように呼ぶんですか?

やまゆりIさん

「お姉さん」とか「おじいさん」と呼びます。

やまゆりKさん ミャンマーには苗字がありません。
たくさんの民族がいるので、苗字のある民族もありますが、少数です。
やまゆりEさん

それに日本には同じ苗字が多いです。
「田中さん」と呼ぶと田中さんという人がみんな振り向きます(笑)

インタビュア

なるほど、それは面白い文化の違いですね!
皆さんは家ではミャンマー料理を食べているんですか?

やまゆりIさん

はい、作って食べています。
日本にない食材はネット通販で買っています。

やまゆりKさん

日本は物価が高いです。
ミャンマーは果物や野菜はとても安いです。
スイカなども100円位で買えます。

インタビュア

スイカが100円!
うらやましい限りですね。
お休みの日は何をして過ごされますか?

ほのぼのWさん

ミャンマーの家族に電話をしたり、ゴロゴロしたり(笑)
しっかり休みます。
友達と休みが合う時には市内のショッピングモールなどに行くこともあります。

いなさ (同僚の)Dさんと休みが一緒になった時は買い物に行きました。
遠いところは施設長さんが連れて行ってくれました。
やまゆりIさん 私たちは3人一緒の休みにしてくださいと頼んだので、一緒の時が多いです。
好きなものを作って食べたり、一緒に買い物に行ったりします。
いなさ

私の両親はミャンマーにいますが、妹は静岡県に住んでいます。
このあいだの休みには妹に会いに行って、東京や静岡を観光しました。

インタビュア

皆さんそれぞれに日本の生活を楽しんでおられるんですね。
では最後に、今後の目標などがあれば教えてください。

ほのぼのWさん

今は日本語能力試験でN3レベルですが、介護福祉士の資格を取りたいのでN2を目指しています。

やまゆりKさん

私もN2を受けて介護福祉士の勉強をします。

介護福祉士を目指す人は多いですね。
そのために私たちはもっと日本語を勉強する必要があります。

インタビュア

やっぱり皆さん、ものすごく向上心が高いですね!
これからも皆さんのその前向きなパワーで、出雲の介護現場を支えてもらえたらうれしいです!
皆さん、今日はありがとうございました。

ニコニコと笑顔の絶えない楽しい座談会となり、外国人介護職員の皆さんに仕事からプライベートまでいろいろな実情を聞くことができました。
向上心を持ち、利用者さんのために懸命に働く皆さんと、彼女たちを温かく受け入れ、働きやすい環境を整えている施設側の姿勢に、聞いている方も心が温かくなりました。

今日もそれぞれの現場で活躍されています

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■関連リンク

社会福祉法人 ほのぼの会

社会福祉法人 きづき会

社会福祉法人 やまゆり