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出雲市湖陵町にある「小規模ホーム・グループホームもくれん」は、地域密着型の家庭的な環境の中で、地域とのつながりを大切に自立した日常生活の支援に取り組んでいる。

今回は、「特別養護老人ホーム天神」の主任主事Kさんと主任生活相談員Nさんが訪問し、「小規模ホーム・グループホームもくれん」の自立支援や食支援、看取りケアや職員研修など幅広い取組について、施設長Mさんと介護支援専門員YさんとFさん、調理師Oさんにお話を伺った。

【今回の出演者】
もくれん施設長Mさん
もくれん介護支援専門員Yさん
もくれん介護支援専門員Fさん
もくれん調理師Oさん
天神 主任主事 Kさん
天神 主任生活相談員 Nさん

それでは『小規模ホーム・グループホームもくれん』のいいとこ発見!

地域とのつながりを大切にしています

天神 主任主事 Kさん

大きな「かかし」にびっくりしました!なんだか見たことのあるキャラクターの女の子ですね。

もくれん施設長Mさん わかりますか(笑)?これは、地域で開催される「かかしまつり」へ出展するためにみんなで作ったものです。毎年恒例となり、回を重ねるごとにクオリティが上がっています。
天神 主任主事 Kさん 大作ですね!
地域行事への参加は楽しみや交流が増えて良いですね。
もくれん施設長Mさん

色々な行事参加はもちろん、普段から地域とのつながりを大切にしています。今は新型コロナの影響で開催できませんが、食支援の取組紹介として開催した「もくれん食堂」は、地域の方々と食事を楽しむ交流の場にもなっていました。

天神 主任主事 Kさん

地域の方を招いて交流できる取り組みはとても良いですね。

もくれん施設長Mさん

地域の皆さんはいつも温かく、畑で採れた野菜を届けてくださる方もおられます。
いつかまた「もくれん食堂」を再開して、日頃の感謝を「食」を通じて地域に還元できればと思っています。

05話題に挙がったとても大きな「かかし」。天神の二人を出迎えてくれた。

03取材日にも野菜が届けられていた。

食事で心も体も元気に!「低栄養改善・食支援」とは?

開所当初から、安心安全な食材にこだわることはもちろん、栄養バランスを考えた家庭的な食事の提供に力を入れている「もくれん」。
栄養&ボリューム満点の自慢の昼食をご紹介いただいた。

04今日の献立:おからナゲットとサラダ/小松菜と油あげの煮浸し/ひじきの酢の物/豆乳スープ/ご飯

もくれん施設長Mさん 実は、在宅高齢者の約2割が「低栄養状態」であると言われています。
背景には粗食が良いとされてきた日本の食文化があり、特に高齢者は野菜中心の食生活となりがちです。
そこで私たちは「低栄養改善・食支援」について学び、不足しがちなタンパク質を摂ることを強化した栄養価の高い食事を提供しています。
ここではBMI指数が20以上を目標に、栄養士や調理師たちが日々の食事を考えています。
天神 主任主事 Kさん どれくらいのカロリーがあるんですか?
もくれん調理師Oさん

今日の献立1食の総カロリーは1182kcalあります。
70歳以上の男性1日あたりの推奨量が1850~2200kcalなので、この1食で約半日分のカロリーが摂取できることになります。

天神 主任主事 Kさん

それは凄いですね!
実際の効果はいかがですか?

もくれん施設長Mさん

食が改善したことで、這って動いていた方が歩いて50m先の商店へ買い物に行けるようになった事例もあります。
体力向上はもちろん、会話も増えたように感じます。
元気な体づくりは、在宅生活の継続にも繋がるので、食支援には費用を惜しまず力を入れて取り組んでいます。

天神 主任主事 Kさん

かなりのボリュームですが、皆さん完食されるんですか?

もくれん調理師Oさん

ほとんどの方が完食されますよ。
「私は少しでいいわ~」と遠慮された方も、案外しっかり食べられるんですよ(笑)。
自宅の食事だけでは栄養が足りない時でも、この1食でしっかり補えるので安心です。
また、食事中は食動作を見ながら、その方に合った食事か、改善点がないか細かく確認しています。

もくれん施設長Mさん

ここでは、私も含め他の職員も利用者さんと一緒に食事をとります。
人手が多いほど手厚く介助できますし、何よりみんなで同じ食事を囲むことで、美味しさや食の楽しさを共感できるところが良いんです。
開所当初からこのスタイルは変わらず、今も大切にしています。

天神 主任主事 Kさん

食事を提供して終わりではないんですね。
利用者さんも喜ばれるでしょうね。

もくれん介護支援専門員Yさん

わいわい一緒に作ることが好きで、みんなでお好み焼きやたこ焼きも作りますよ。
つまみ食いでお腹がいっぱいになったり(笑)。
そんな感じが良いんです!

最近ではフルーツサンドなど、若者文化も取り入れて私たちも楽しんでいます。
皆さんの表情が明るいと職員も嬉しくて、モチベーションアップにつながります。

天神 主任生活相談員 Nさん

みんなで食事を囲んで楽しく過ごせる形はとても良いですね。

もくれん施設長Mさん

食事の準備にも関わって頂くことで、役割や存在意義が感じられると思っています。
例え何もできなかったとしても、一緒に過ごせて嬉しい気持ちを伝えて、互いの存在を認め合える接し方を心がけています。

もくれん介護支援専門員Yさん

食事風景や日常の様子をホームページやfacebookでも紹介しているので、ぜひご覧ください。
私たちの情報発信が、他の事業所さんやご家庭での食事やお出かけの参考になれば嬉しいです。

 

気持ちに寄り添い、主体性のある暮らしの継続をサポート

グループホームを見学しながら、取組や日頃大切にされている想いをお聞きした。

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もくれん介護支援専門員Fさん ここでは日課はつくらず、それぞれにお話を楽しんだり、お花を活けたり、料理や手芸など、自分の好きなことを選んで自由に過ごされています。
天神 主任主事 Kさん 皆さん思い思いに楽しんでおられますね。
普段の関わりで大事にされていることはありますか?
もくれん介護支援専門員Fさん

いつも楽しく過ごせればと、色々なことを考えていますが、押し付けにならないよう、何をするにもまず伺って、ご本人の意思を大切にしながら接することを心がけていています。
ご病気の加減でコミュニケーションが取りづらい方も、ふとした時に自発的な発言が出ると嬉しくて、一つ一つ言動を見逃さないよう気をつけています。
興味を示されたことは、いつか提案できるように、こまめに記録し職員同士で情報共有しています。

天神 主任主事 Kさん

お気持ちを大事するのはとても大切なことですよね。
他に何か工夫されていることはありますか?

もくれん介護支援専門員Fさん

一人ひとりが穏やかな生活を送れるように、プライバシー確保も大切にしています。時には、職員の目を気にせずくつろげることも必要だと思うので、あえて廊下の死角となる場所にソファーを置き、憩いスペースを設けています。廊下は直線ではなく角のある造りになっていて、場所によって特徴が違うので、自分の部屋が覚えやすいというメリットもあるんです。

天神 主任生活相談員 Nさん

利用者さんへの気配りが素晴らしいですね。
どうしても安全性を優先し、目が行き届くことを重視していましたが、今後はこういった空間づくりも参考にしたいと思います。

もくれん介護支援専門員Fさん

グループホームは思い入れのある自宅ではないし、職員は家族の代わりにはなれない現実があります。家族と離れ他人同士の共同生活で、寂しさや不安、煩わしさがあるのは自然なことなので、気持ちに寄り添い支え合いながら、主体性のある暮らしを継続できるようサポートしたいと考えています。
人生の先輩方を敬う気持ちで関わり、「家ではないけど、ここ(もくれん)も良いな。」「もくれんで良かった。」と感じてもらえるよう、居心地の良い環境、関係性を心がけています。

天神 主任主事 Kさん

とても素敵な関わり方をされていますね。
こちらでは、お看取りのケアもされていると伺いました、具体的な取組を教えてください。

もくれん介護支援専門員Fさん

残された最期の時間をご家族とゆっくり過ごしたい方のために、「交流室」というお看取りの部屋をご用意しています。
専用玄関から時間を気にせず気兼ねなく出入りでき、お風呂、トイレも完備していますのでご家族の宿泊も可能です。

天神 主任主事 Kさん

どうしても重篤になれば病院や、特別養護老人ホームに移られることが多いので、グループホームでお看取りの体制があることは凄いですね。

もくれん施設長Mさん

医療的な処置が必要な場合も、訪問診療医や看護師、薬剤師と連携しながら迅速に対処できる体制が整っているので安心です。

もくれん介護支援専門員Fさん

こうやって皆様の最期に関われることは有難いことで、一つ一つの経験から多くのことを学んでいます。
ここで過ごす時間が、ご家族の在り方を改めて感じられる機会となって、ご本人もご家族も悔いのない最期を迎えられることを願っています。

小規模ホームとグループホームの連携で自立した生活をバックアップ

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天神 主任生活相談員 Nさん

施設の中は、どの空間も温かみが感じられて家庭的な印象を受けました。
私たちの施設ではバリアフリーを重視していますが、こちらは玄関にしっかりと段差があって驚きました。

もくれん施設長Mさん

基本的に、在宅生活を長く送ってもらいたいという想いがあり、そこにつながる支援を心がけています。
ですから、できるだけ日常動作が自分でできるように、あえて玄関の段差を家と同じような高さに設定しています。
必要に応じて介助はしますが、心身の状態に関わらず、ご自身で体の使い方を考えながら動かすことが大切だと思っています。

天神 主任生活相談員 Nさん 在宅の暮らしをイメージした環境で、体の機能を維持できるよう支援されているんですね。
もくれん施設長Mさん 皆さん「家が良い」という希望が第一にありますが、介護支援や安全性、食支援など施設の良さもあるので、それぞれのメリットとデメリットのバランスを見ながら、ベストな支援を考えることが大事です。
そういう点で、ここは小規模ホームとグループホームが併設しているので、その方の状況やタイミングに合わせ支援を変えられる良さがあります。
もくれん介護支援専門員Yさん 環境を整えながらフォローすることで、良い状態が維持でき、症状が回復することもあり、中にはグループホームから自宅に帰られた方もいらっしゃいます。
天神 主任主事 Kさん それは凄いですね!
もくれん介護支援専門員Yさん

認知症の方にとって施設の移行は大変なこともありますが、事業所が一貫しているので情報共有も容易で、顔なじみの職員が関わる安心感から、不安や負担も少なく比較的スムーズに移行することができます。

天神 主任主事 Kさん

事業所の特徴を活かして、柔軟な対応をされているんですね。

もくれん施設長Mさん

そうですね。
小規模ホームは多機能型居宅介護として、従来は個別に行う在宅サービスを必要に応じて組み合わせた柔軟な対応が可能です。
24時間の支援を通して、利用者さんを取り巻く環境や家族との関わり方など、生活の全てを把握した上で「施設ではどんな支援ができるか」につなげられるところも利点だと思います。

もくれん介護支援専門員Yさん

訪問した際はお世話をしながら、趣味や得意なこと、普段と変わった様子がないかまで、常に情報収集しています。気づきのアンテナは、簡単に身に付くものではありませんが、個々にスキルや知識など特性を発揮し現場で役立てています。
そこで感じたわずかなことも頭に入れながら接する、現場職員たちのアセスメント能力の高さに感心しますよ。

天神 主任主事 Kさん

在宅サービスでの視点の違いに驚きました。
こういった意識を職員と共有して、私たちの現場でも見直せることがないか話し合ってみたいと思います。

もくれん施設長Mさん

「もくれん」から「天神」さんへお世話になる場合もあるので、その際は事業所間でも入所に至る総合的なプロセスを確認して共有することが大事ですね。

職員の意識とチームワークを高める環境づくり

天神 主任主事 Kさん 皆さんそれぞれが色々な視点で考えておられ、介護支援に対する姿勢が素晴らしいと思いました。
こちらでは、どのような職員研修をされていますか?
もくれん施設長Mさん ここでは職員研修として、ビジネスゲームの一つである「マネージメントゲーム」(以下MG)を導入した教育に力を入れています。
(※昭和51年に西順一郎がソニーCDIで開発した経営教育の手法で、株式会社もくれん代表取締役の上田英範は公式インストラクター)
天神 主任主事 Kさん それはどういったものでしょうか?
もくれん施設長Mさん

「人生ゲーム」や「モノポリー」をイメージすると分かりやすいですが、このようなゲームをベースに、疑似体験しながら本格的な経営の構造や企業会計学を学べることが特徴で、全国で多くの企業などが導入しています。
MGは、単に収支計算だけでなく、業務改善につながる時間の使い方や、物事の考え方についても学ぶことができ、介護現場における課題解決のヒントも多く含まれているんですよ。

もくれん介護支援専門員Yさん

研修で環境整備の大切さを学び、倉庫の整理整頓をしたことで、物を探す時間が短縮され、以前より利用者さんと関わる時間を多く確保できることにつながりました。

もくれん介護支援専門員Fさん

また、倉庫内にはボードを設置し、日頃の気づきや改善点を思いついた時に付箋に貼って共有できるようにしました。
一つ一つ課題解決に向けてみんなで話し合いができ、チームワーク向上にも役立っています。

もくれん施設長Mさん

このように職員たちが研修の学びを活かし、普段から生産性のある時間を増やすことを意識し、自発的に行動できるようになりました。
こういった力が身に付く環境をつくることが会社の役割だと思っています。

天神 主任主事 Kさん

皆さんが意識を高め合うことで、業務改善につながっているんですね。

もくれん施設長Mさん

さらにゲームを通して事業のシミュレーションから費用対効果の根拠も導き出すことができ、安心して自社事業に取り組めるという効果もあります。
「食支援」も、このシミュレーションのおかげで自信を持って取り組むことができています。
この他にも、働きやすい職場づくりを目指し「エマジェネティックス」(以下EG)という研修も導入し、職員のコミュニケーション能力アップを図っています。

天神 主任主事 Kさん

具体的にはどんな研修でしょうか?

もくれん施設長Mさん

EG研修では、脳科学理論に基づき思考と行動の特性を分析したプロファイルによって、自分をはじめ周りの仲間や組織全体への理解を深めることができます。
特性別に気をつけるポイントも学べるので、相手の特性を理解した質の高いコミュニケーションが身につきます。
受講後、意識や心がけが変わったという声も聞き、研修の効果を実感しています。
円滑なコミュニケーションが取れることでチームワークが強化でき、良好な人間関係の構築は離職防止にもつながるので、今後も力を入れて取り組みたいと思います。

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職員間で日頃の気づきや改善点を共有し合うボード。

自発的な行動を温かく見守る環境が成長につながる

10「もくれん」では現在、特定技能実習生としてベトナム国籍のGさんを雇用している。

天神 主任生活相談員 Nさん とても自然に馴染まれていましたね。
もくれん施設長Mさん 働き始めてまだ数ヶ月ですが、介護の仕事に熱意を持って取り組んでいます。
本当に良い人材に出会いました。
天神 主任主事 Kさん 一緒に働いてみていかがですか?
もくれん施設長Mさん

Gさんは言葉遣いがとても丁寧で、必ず敬語で話されます。
その様子を見て、私たちも改めて接し方を振り返ることができ、気が引き締まりました。
今はまだできない業務もありますが、他の先輩職員をお手本に次のステージへ成長して欲しいですね。

もくれん介護支援専門員Fさん

Gさんは何に対しても、とても一生懸命で、いつも笑顔で明るく、利用者さんとも上手にコミュニケーションが取れています。

もくれん施設長Mさん

Gさんの利用者さんへの関わり方を見ると、何か力になりたいと自発的に考えて行動ができているので、他の職員が上手に育ててくれているんだなと、嬉しく思いました。
周りから良い影響を受けているからこそ行動につながっているのでしょう。

天神 主任主事 Kさん

とても良い関係性ができていますね。
言葉や文化の違いなど、色々と不安がよぎりますが、実際に受け入れられて凄いと思います。
今後は介護業界の人材不足解消に向けて、こういった雇用も視野に入れて考えていくことが必要ですね。

介護に向き合う想いは同じと実感

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天神 主任生活相談員 Nさん お話を伺って、皆さんが利用者さんの人生や、歩みを大事にしながら支援されていることが良く分かりました。
私たちが掲げる「普通の暮らしの継続」という理念にも通じるところが多々あり、支援形態や関わり方は違っても、介護の考え方の原点は同じなんだと感じました。
天神 主任主事 Kさん とても勉強になり、たくさんの新たな視点が加わりました。
これを機会にまた今後も交流が続くと嬉しいです。今日はありがとうございました。
もくれん施設長Mさん

もちろん、ぜひ今度は他の職員さんも一緒に遊びにいらしてくださいね!
今後もお互いに交流を深めましょう。

座談会を終えて

『小規模ホーム・グループホームもくれん』のいいとこ発見!いかがだったでしょうか?
法人規模は違っても、皆さんそれぞれの立場から、温かい気持ちで介護に従事されており、根底にある想いは同じであると感じました。
今回訪問したお二人は、盛りだくさんの取り組みから多くの視点に気づき、改めて支援の在り方を見直すきっかけとなったのではないでしょうか。

■関連リンク

社会福祉法人 島根県社会福祉事業団

株式会社 もくれん