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『グループホーム北陽』ってどんなところ?

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出雲市にある「グループホーム北陽」は、認知症のある方が共同生活を送る地域密着型の施設です。
定員18名の家庭的な環境の中で、一人ひとりの生活リズムやこれまでの暮らしを尊重しながら、その人らしく安心して過ごせる毎日を支えています。

「利用者さんの笑顔をどうやって生み出すか」を大切に、制限ではなく理解と関わりを重視したケアを実践。地域との交流にも力を入れ、施設を越えた“みんなの居場所”を目指しています。

今回、グループホーム北陽を訪ねたのは、「早稲田イーライフ出雲」の管理者Yさん。

日頃から高齢者の支援に関わる立場として、グループホーム北陽の取り組みについてお話を伺いました。

【今回の出演者】
Tさん
Yさん

「ここがみんなの居場所になるように」という思いを込めて

Yさん

グループホームとして、北陽さんが大切にしていることは何ですか?

Tさん

ここを開所する時、「利用者さんにとっても、職員にとっても、地域の方にとっても、
ここがみんなの居場所になるように」という思いを込めました。

その中で常に意識しているのは「利用者さんをどうやって笑顔にするか」ということです。
そのためにも、まず私たち職員が笑顔で関わることを大切にしています。

image_04利用者さんがそれぞれのペースで過ごすホール。みんなで体操を楽しむ時間も取り入れられています。

Yさん

皆さんホールに集まっておられて、アットホームな雰囲気ですね。

普段はどんな一日を過ごされているんですか?

Tさん

「この時間はこれをする」という決まりは特になくて、一人ひとりに合わせた過ごし方を大切にしています。

個室もありますが、お部屋で一人で過ごしていると不安や困りごとが出てくることもあるので、
日中はホールでみんな一緒に過ごしています。

その輪の中に私たちも入って、何気ない出来事を一緒に喜んだり、
楽しい気持ちを共有したり、そういった関わりを大切にしていますね。

Yさん

同じ目線で一緒に楽しむことって大切ですよね。

でも一方で、会話のキャッチボールが難しいと感じる場面などはありませんか?

Tさん

時々はありますよ。
落ち着きがなくなったり大きな声が出たりと、いわゆるBPSD※と呼ばれる症状が見られることもあります。

「何に困っておられるのか?」「なににつまづいているのか?」「どんな気持ちなのか?」「なぜなのか?」などを考えながらその方の背景を丁寧に探り対応することで、症状を和らげることができます。

同じ話を繰り返される場合も、毎回しっかり耳を傾けると、最後には安心した表情を見せてくださるんです。

※BPSDとは、認知症に伴う行動・心理的な周辺症状のこと。

Yさん

なるほど〜。

そうした考え方は、他の職員さんにも共有されているんですか?

Tさん

私はスタッフに「掃除や洗い物、洗濯と言った業務も大切だけれど、まずは利用者と関わること、知ること、見ること、一緒に過ごさせていただく時間を1番大切にしましょう」と声掛けしています。

利用者さんとしっかり向き合い、話をすることが私たちの一番の仕事だと思っています。

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一人ひとりに合わせた対応で、安心して暮らせる環境づくりを

Yさん

利用者さんが安心して生活できるように、工夫されていることはありますか?

Tさん

例えば、トイレの場所が分からずに歩き回ってしまう方には、
お部屋からトイレまで床にテープを貼り、導線を分かりやすくしています。

ただ共同生活なので、それがその方には目印になっても、別の方には障害物に見えてしまうこともあります。

「誰かにとっての良い工夫」が「別の誰かの危険」にならないよう、その都度考え、調整しています。

image_05部屋からトイレまで迷わず移動できるよう、床には導線を示すテープが貼られています。

Yさん

いろんな方の見え方を考えながら対応されているんですね。

利用者さんと日々関わる中で、心がけていることはありますか?

Tさん

言葉だけでは伝わらないこともあるので、触れながら話したり、立ち居振る舞いなど、
言葉以外のコミュニケーションも大切にしています。

あと、できるだけ否定しないことですね。
成功体験や自己有用感を大切に、何気なくさりげないフォローをしながら一人一人のできることを伸ばすこと、
「誰かの役に立ちたい」「私にもできるんだ」という気持ちを大切に、できないところに目を向けるのではなく、
「その人の最大限の力を発揮できる工夫」をしながら、一緒に楽しんで取り組むこと、また、できたときには一緒に喜ぶことを大切にしています。

Yさん

職員さん側の受け止め方も、とても大事なんですね。

Tさん

例えば、ある方が歯磨きのあとに、歯ブラシで髪をとかそうとされたことがありました。
そんな時も、「汚いですよ」と止めるのではなく、「そういう使い方もあるのか」と考えます。
鏡を見ながら一生懸命にされているなら、「きれいになりますね」って言ってあげればいい。

驚くような行動があっても、「何をしているんですか!!」と否定するのではなく、
その方なりの理由を知ること、なぜそうされたのか前向きに受け止めることを大切にしています。

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Yさん

何でもプラスに考える。難しいけれど大切な視点ですね。

現場で感じておられる課題はありますか?

Tさん

やはり、職員一人ひとりが知識をきちんと身につけ、認知症への理解をさらに深めていくことだと思います。
「なぜ悲しかったのか」「なぜ怒っているのか」、その気持ちに寄り添える職員であってほしいと思っています。

私は利用者さんに希望があれば、100%は難しくてもできるだけ叶えてあげたいんです。
「どうせできない」で終わらせるのではなく、「どこまでならできるか」を探す、そんな姿勢を大切にしています。

Yさん

本当に、利用者さんの気持ちを大切にされているんですね。

Tさん

認知症になることに対して、「嫌だ」「怖い」というイメージは、まだまだ強いと思います。

でも、認知症になっても、その人らしさが失われるわけではありません。
周りが理解し、関わり方を少し変えるだけで、穏やかに、笑顔で生活することはできるんです。

そのことをきちんと伝えていきたいという思いから、学生さんや地域の方に向けた発信活動も続けています。

開かれた“みんなの居場所”で家族のように過ごす日々

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Yさん

地域との関わりもあるんですね。

Tさん

はい。地域の皆さんには、本当にたくさん力を貸していただいています。

北陵高校や県立大学の学生さんとも交流があり、北陵高校ではインターアクトクラブの生徒さんが、
週に2回ボランティアとして来てくれています。

その他、認知症カフェや認知症サポート養成講座、認知症勉強会、介護基礎的講座なども働き掛け積極的に地域交流を深めています。
毎月地域の方の「よし笛」の演奏会も皆でとても楽しみにしています。
たくさんの方との関わりを通し、とても優しい気持ちで心がほっこり。笑顔になります。

Yさん

利用者さんにとっても、いい刺激や交流になりますね。

Tさん

そうですね。
人とのつながりを大事にしているので、「来たい」と思ってくれる人には、
どんどん来てもらって、本当にみんなの居場所になれたらと思っています。

Yさん

今回見学させてもらって、皆さんがまるで家族のように暮らしているような印象を受けました。

日々さまざまな出来事がある中で、その都度、臨機応変に向き合いながら、
職員一人ひとりがケアの質を高めておられるのだと感じます。

 

Tさん

ここは認知症の方のための施設ではありますが、実は「認知症かどうか」ということは、あまり関係ありません。
利用者さんも、職員も、地域の方たちもみんな同じ「人」なんです。

「家族みたいですね」と言っていただくとすごくうれしいです。
ここは私たちの家であり、こうして毎日皆さんと一緒に楽しく生活できていることが、私にとっての幸せでもあります。

image_08廊下の一角には、利用者さんが落ち着いて過ごせる場所として置かれた椅子が。隣の植物も、利用者さんたちが日々大切に育てています。

見学を終えて ― 早稲田イーライフ出雲 Yさんの感想

Yさん

利用者さん一人ひとりと真剣に、誠実に向き合っておられる姿が伝わってきて、その熱量に感動しました。
同じ介護職として学ぶことも多く、お話が聞けて本当に良かったなと思います。

認知症の度合いは違っても、大切にすべき基本は同じ。制限するのではなく、
その人らしい自由を大切にするケアに、たくさんの気づきと学びを得ることができました。
私も日々の仕事の中で迷うこともありますが、今回の訪問を通して、自分自身を見つめ直すきっかけをもらえたように思います。

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