現在、全国的に在宅医療患者や要介護認定者数が増加し、訪問看護のニーズが高まっている。
出雲市においても、25カ所の事業所が出雲支部会として連携し、各自訪問看護サービスを提供している。
高齢化が進むなか、今後さらなるニーズの高まりが見込まれるが、人材確保や就労定着に向けどんな取り組みが必要なのか。
今回は、出雲市今市町にあるクレド訪問看護リハビリステーション(以下クレド)を訪れ、所長のAさんに立ち上げの経緯や、事業所の取り組みについて伺った。
また、病院勤務から訪問看護へと転換した看護師のTさんに、入社のきっかけや現在の仕事に対するやりがいなどを伺った。
訪問看護師が輝くステーションづくりにより、出雲の医療や福祉を充実させたい
有限会社セントラルビルは、出雲の医療や福祉ニーズの高まりを感じ平成23年に整骨院を開院、平成27年には訪問鍼灸マッサージ事業と続き、さらに令和2年4月、『クレド』を開設し、訪問看護事業をスタートした。
事業所立ち上げの経緯や事業に対する想いをAさんに伺った。
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私たちの祖父母時代と比べると、今は在院日数が短くなり、退院後のケアが必要な場合は自宅や福祉施設からの通院となり、患者さんや家族の負担は大きくなっています。 今後、少子高齢化により、ますます介護や在宅医療の必要性が高まっていくと感じ、訪問看護リハビリステーションを開設しました。 現在、出雲市内全域で退院後も医療ケアが必要な方を対象に、各医療・福祉機関と連携をとりながら、身体回復に向けた医療ケアや健康管理、日常生活のサポートを行っています。 長年、医療や福祉の現場に携わるなかで、年々進む出雲の高齢化へ対応するには、これまでの経験を活かし、さらに総合的な訪問ケアを充実させる必要があると感じています。 在宅医療や福祉について課題が増えていくことを暗い話題ととらえずに、今後も私たちにできる取り組み方で、出雲の暮らしを支える社会貢献ができればと考えています。
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所長のAさん
想いや価値観の合致を重視した採用基準で人材確保
開設から2年、現在看護師5名、作業療法士1名、言語聴覚士1名、保健師1名、ケアアシスタント2名、計10名の専門知識を備えたスタッフが勤務。
企業理念に「誠実を旨とし、あふれる愛情で人々を笑顔にする」を掲げるクレドのスタッフは、結束力が強く、いつも前向きで笑顔が絶えないそうだ。どのようにしてチームの想いを一つにできるのか。
人事担当のAさんに、採用基準のこだわりや人材確保の具体的な取り組みについて伺った。
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ここには20代~50代と年齢も幅広く個性豊かなスタッフが働いていますが、全員共通して仕事に対する思いや姿勢が前向きで、会社方針に合致したメンバーが集結しています。 「クレド」という言葉はラテン語で、志や信条という意味があります。 私たちはスタッフたちに、共に成長し合う気持ちを大切にしながら、目標や信念を持って意欲的に働いて欲しいと思っています。 まず、仕事をするにあたって、会社の方針と合わなければ長続きしません。 面接では、仕事に対する思いや考え方だけでなく、個人的に取り組んできたことや、これからどのような働き方をしていきたいかなどをお聞きしています。 また、普段見えにくい訪問看護の仕事や職場の雰囲気、スタッフの人柄を知ってもらおうと、SNSで情報発信を行っていますが、私たちと働くことに興味を持ってもらうリクルートツールとしても活用しています。 投稿は、全てスタッフ主体で取り組み、アイディアを練って発信しています。 社長を筆頭に、みんなが本当に毎日楽しく自然体で過ごす様子がわかると思うので、ぜひご覧ください。 そして共に働くスタッフの個性を理解したチームづくりを心がけ、長く働けることで、皆の経験値が積み上がっていき、自分の仕事の成果が見えるようになります。 この成果の積み重ねでまとまりの強いチームワークが生まれていきます。
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成長できる環境づくりへの挑戦
就労定着に向けた働きやすい職場環境づくり
チームをまとめる所長のAさんは、自身も保健師として現場に出ながら、良質なサービスが行き届くよう、日々全体的なマネージメントを行っている。
スタッフが働きやすい環境づくりについて、AさんとTさんに伺った。
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私たちの事業所では、一人の患者さんに対し数人のチーム制で支援を行っています。 その利点として、共通の課題に対して複数人で携わることによって、複数の視点で問題の発見につながり、問題解決のために相談をすることができ、その結果迷いのない看護ケアを提供しています。 また、心身の状態によって、配慮するケースもありますが、常にリスク回避を意識して安全なケアができるよう気を付けています。
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みんなで担当するので、不安や悩みもシェア出来きます。 自分一人だと、患者さんに正しく伝わったか不安になることもありますが、チームのアドバイスも聞けるので心強いです。 逆にみんなの悩みを聞いて、自分がその立場になった時を想定し対処を考えることで、自分では思いつかなかった方法や新しい知識が増えることでスキルアップに繋がっています。
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看護の基礎知識やスキルは備わっていても訪問先で判断に困ることがあります。スタッフ間で相談したり、医師やケアマネージャーに相談させていただくことも多いです。一人で悩まず朝礼で相談で相談きるようにしています。 また、業務の記録はiPadを活用し、WEB上でタイムリーに情報共有できます。 一人一台iPadがあることで、自社で準備した200を超える研修動画コンテンツを空き時間に視聴できるようにし、少しでも不安がない環境づくりを行なっています。
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また、休みの希望も取りやすく、誰かが突発的に抜けてもカバーし合えることもチーム制の良いところです。
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普段の休みや体調不良、家族の事情や、出産・育児に関しても安心して休める体制を整えています。 子育て中のスタッフも多いので、業務の効率化やお互いに助け合うことでここ2年は残業の実績はなく、仕事と家庭をバランスよく両立できる職場環境をつくっています。
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看護師のTさん。業務記録をiPadに入力。
患者さんの暮らしに寄り添える、理想の看護スタイルに大満足
入社して1年が経った看護師のTさん。
浅津さんと一緒に入社当時を振り返りながら、クレドに決めたきっかけから現在働く様子について話を伺った。
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以前は、病院で看護師として勤務していました。 もともと在宅看護師に興味があったので、いつかはチャレンジしたいと思っていました。そんな時、たまたま事務所の前を車で通り、ライオンの看板が目に入ったことがきっかけで(笑)。 そこから、Instagramで仕事の内容や職場の雰囲気を見てさらに興味が湧いて見学に行きました。
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Tさんが見学に来た時間が、ちょうど運良くミーティングの時だったから、そのまま「参加する?」みたいな感じで、一緒に交じっていましたね。
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まさか、いきなりミーティングに参加できるとは思いませんでしたが、リアルに働く様子や、入った後のイメージが掴めたので良かったです。 とにかく皆さんが生き生きとしておられて、楽しそうだなと思いました!
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病院からの転職、訪問看護師になることに不安はなかったのか?
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一人なので、ケア中のトラブルや病状が悪化したら?という不安はありました。 病院では、何かあっても近くに医師や他のスタッフもいて安心でしたが、ここでは自分で判断しないといけないので、以前と違うプレッシャーがありました。 でも、その不安は入社後すぐに無くなりました。 研修や同行訪問もあって、現場で先輩スタッフにマンツーマンで細かなケア方法を学べましたし、困った時はすぐに所長や他のスタッフと連絡が取れるとわかり安心しました。
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病院と違って、利用者さんの自宅にはご家族や、親戚の方が居られることもありますね。 最初は対応に戸惑うことも多かったと思いますが、クレドでは先輩と同行訪問を経て、3回目から一人で訪問に行けるようにしています。 今ではもう問題なく訪問しているよね。
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同行訪問の後は、必ず振り返りの時間があるので改善点を確認できるところも助かりました。 本当に一つ一つ小さなことまで見守ってくださるので、失敗を恐れず何でもチャレンジできるんだと思います。 わからないことは、誰に聞いてもちゃんと答えてもらえるし、業務のルールや仕組みが明確なので迷うことがありません。 これからは自分が教わったことを、後輩たちにも同じように統一感を持って指導できます。
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実際に訪問看護師として働いて、どんなことを感じているか、やりがいや心がけていることを伺った。
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毎日楽しいです。 患者さんと会話しながら関わっている時が一番好きな時間です。 病院では、どうしても治療が優先なので、一人の患者さんにゆっくり関わることはできませんでした。 看護が好きなことは大前提として、病気を診るだけじゃなく患者さんの生活に寄り添って関わりたいと思っていたので、それが叶いました。 不安を抱えながら生活している患者さんのお世話をすることで、一緒に暮らす家族のケアにも繋がります。 皆さん、「大丈夫、大丈夫、えらくないけん」と言われることが多いですが、その時も顔色や表情、食欲など小さな異変を見逃さないように気を付けています。 一度体調が悪化してしまうと、回復に時間がかかり苦痛が長引くので、早めに医師やまわりの人たちと連携をとって、最善のケアができるよう心がけています。 体調が回復したり、慣れ親しんだ自宅で安心して過ごされる様子をみると嬉しいですし、やりがいを感じられるお仕事だと思っています。
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成長を続け、来てもらって良かったと喜んでもらえる看護師を目指す
最後に、二人に今後の目標と訪問看護師を目指す方へメッセージを頂いた。
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今後の目標として、まだまだ訪問看護師としての経験は浅いので、これから色々な疾患に対応できるよう、今まで以上に幅広い知識を身に着けたいです。 また、年齢や見た目で、若いから頼りない、知識が少ないと思う方もおられます。 喋り方や仕草一つでも相手に与える印象は大きく、特に悪い印象は強く残ってしまうので、訪問後には必ず毎回改善点がないか振り返ります。 せっかくもらった時間を自分の言動で台無しにしないよう、今の自分に足りないところを補いながら成長していきたいです。 これからも一度の訪問を大切にして、来てもらって良かったと喜んでもらえる訪問看護師になりたいです。
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涙が出てきちゃう。 業務中は、こういう深い想いをゆっくり聞ける機会が少ないので、今回Tさん自身から直接聞けたことが本当に嬉しいです! これからも、スタッフたちがのびのびと自信を持って成長できる環境をつくっていきたいです。 クレドでは、患者さんに愛情をもって接し、暮らしに寄り添うケアで笑顔になって頂ける訪問看護を行っています。 退院後も患者さんと関わりながら支援できるのは、訪問看護師ならでは。患者さんに求められているケアは何か? 身体回復や健康管理に加えて、その方らしい生活を支援する看護がしたい方は、ぜひ訪問看護師として地域社会を支える仲間になって欲しいですね。
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今回の座談会で、日頃なかなか聞けないお互いの想いを知ることができたという二人。
Tさんの成長と、その想いに感激し涙するAさん。
「泣かせないで~」と目頭を押さえながらも、嬉しくてたまらない様子が伝わってきた。
また、Tさんも前半の柔らかな雰囲気が一変、今の課題やこれからの目標を真剣に話す口調に胸が熱くなった。
信頼関係がしっかり築かれているからこそ、これだけ真剣に語り合うことができるのだろう。
クレドには、成長志向の高い人材が集まっている。
これからも、彼女たちのような熱意溢れる方たちが出雲の福祉医療を支えていくのでしょう。
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